1999.11.21

ジョン.キ−ツの詩(T)

パ−トT


つれなき美女

「どうしたのだ、見事な鎧に身を固めた騎士よ、

かくも独り寂しく蒼ざめてさ迷っているのは?

湖の菅の葉は枯れ果て、もう鳥も鳴かなくなったというのに!

どうしたのだ、見事な鎧に身を固めた騎士よ、そんなに憔悴し、

悲しみに打ちひしがれているのは?

百合のように蒼白な君の顔は、

苦悩と熱病のような汗で、じっとりと濡れている。

薔薇色に輝いていたと思われる君の頬も、

今は色褪せ、見る影もないではないか」

「私は緑の草地で一人の美女に出会った、

その美しさは比類なく、

そうだ、

まさに妖精の娘といえた。

その髪は長く垂れ、その足は軽やかで、

その眼は妖しげな光を湛えていた。


私は花輪を編んで彼女の頭を飾ってやり、

馥郁たる花の腕環も腰帯も作ってやった。

彼女は、私を恋しているかのように、

私の眼をじっと見つめ、呻き声をあげた。


私は彼女を馬に乗せて静かに駈けたが、

終日私の眼には何も入らなかった、・・・・・・・

彼女横ざまに腰をおろし、

絶えず妖精の歌を口ずさんでいたからだ。


彼女は甘い草の根や、野生の蜜や甘露を探してくれ、

異様な言葉で私に囁いた、

『わたしは貴方を愛しています・・心から』と。

彼女は私を魔法の洞窟につれてゆき、

涙を流しては溜息をついた。

私はその妖しい光を湛えた眼を、

閉ざしてやった、・・四度、接吻をくり返しながら。


やがて彼女は私を眠らせてくれた、

私は夢を見た。・・・・だが、なんと悲しいことか、

それがこの冷たい丘の中腹で私が見た

最後の夢になってしまったのだ。


夢の中には蒼白い王侯や武者たちが現れた、

いずれも死人のように蒼ざめていた、

そして、叫んでいた、・・・・『あのつれない美女が

お前を虜にしてしまったのだぞ!』と。



暗がりの中に、死の形相も凄まじい彼らの唇が浮かび、

大きく口を開いて凄惨な警告の叫びをあげていた。

私は眠りから覚め、気がつくと、

この冷たい丘の中腹にいるのが分かったのだ。

私がこのあたりから去ろうとせず、

独り寂しく蒼ざめてさ迷っているのはそのためなのだ、

湖の菅の葉は枯れ果て、

もう鳥も鳴かなくなってはいるのだが」


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